【第101回】鳥海山・飛島ジオパークのテーマの意味

2023年6月1日

鳥海山・飛島ジオパークのテーマは「日本海と大地がつくる水と命の循環」です。このテーマにはどんなメッセージが込められているのでしょうか。

私たち人類を含め、ほぼすべての生物は水なしには生きられません。試算によると、地球には13.8億Km3の水があるとされていますが、その96.5%が海水です。全体の3.5%ほどしかない真水の大半は、氷河や極域の氷雪と地下水で、そのままでは利用できません。私たちが利用できる水は、ごくわずかなのです。

私たちがきれいな真水を手に入れることができるのは、水そのものが循環しているからです。冬、日本海を渡る時に水蒸気を得た季節風が、鳥海山の斜面を吹き上がると、雨雲が発生し雪が降ります。この雪が少しずつ解け、地下に浸み込むと地下水になります。地下水は水を通しにくい地層の境目に沿って地下を流れ、やがて地表に湧き出します。湧き出た水は太陽光によって蒸発し、水蒸気となります。この水蒸気が湧水となって、再び湧き出すのです。日本海と鳥海山が造り上げた天然の水循環システムが、私たち人類を含む多くの生物の命を支えていると言えるでしょう。

水は農水産業や工業などの産業にも欠かすことができません。鳥海山・飛島ジオパークのテーマには、私たちとその暮らしを支える美しい水資源と、それをもたらす日本海と大地をずっと守っていこう、というメッセージが込められています。



一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 次長兼主任研究員 大野希一 氏

【文・写真】
一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 次長兼主任研究員 大野希一 氏

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