※にかほ市の特産品の一つであるイチジク。「大竹いちじく」は農水省の日本地理的表示(GI)にも登録されています。
中東のアラビア半島が原産とされるイチジクは、クワ科イチジク属の落葉樹です。イチジクと人の関りは古く、聖書に登場するアダムとイブが最初に身に付けたのがイチジクの葉とされています。日本には江戸時代に伝わり、明治以降に多くの品種が栽培されるようになりました。
亜熱帯産のイチジクは寒さに弱く、また葉が大きいため、寒冷地や風の強い場所は栽培に適しません。さらにイチジクは水分を必要とする割には耐水性に弱いため、育成には適度な水分を保持する必要があります。
にかほ市大竹地区は大地の動きがつくった高台の陰に位置しているため、日本海から吹き付ける季節風がほとんど当たらず、また標高も高くないので冬でもあまり気温が下がりません。またこの地域には、鳥海山の火山灰に由来する黒ボク土が分布しています。柔らかい黒ボク土は適度な水分を保持する性質を持ち、イチジクの栽培にはうってつけです。イチジクの栽培に適した地形と土壌、そして人々の努力が、この地域で農作物としてのイチジク生産を支えています。
9月から10月に旬を迎えるイチジクを使った甘露煮は、厳しい冬を乗り切るために生み出された食文化の一つです。一粒のイチジクの甘露煮には、地域の自然環境に対応するための人々の知恵が詰まっています。
