【第125回】トビシマカンゾウの特徴と謎

2025年6月1日

   ※飛島のトビシマカンゾウ。飛島の人たちはこの花を塩漬けにして保存食にしていました。

ゼンテイカはススキノキ科ワスレグサ属の多年草で、栃木県の日光地域に多く見られることから、一般にはニッコウキスゲ(日光黄菅)とも呼ばれています。本州中部では標高1,000 m以上の高山地帯にみられますが、東北や北海道といった冷涼な地域では海岸沿いに群落をつくることもあります。このゼンテイカの一種がトビシマカンゾウです。

酒田市の花であるトビシマカンゾウは、離島特有の変種(島嶼型変種)とされ、これまで、本州や北海道でみられるゼンテイカ類に比べて大きく、地面から花までの茎(花茎)が長いことや、多くの花をつける特徴があるとされてきました。近年、山形大学の笹沼恒男准教授の研究グループが、東北や北海道のゼンテイカ類と、佐渡島および飛島に自生するトビシマカンゾウは異なる遺伝的特徴を持つことを明らかにしました。これにより、両者はその背丈や花の数だけでなく、その進化の過程が異なることがわかってきたのですが、なぜ佐渡島と飛島にのみトビシマカンゾウが自生しているのかなど、新たな謎も生まれています。今後の研究の進展が期待されます。

6月はトビシマカンゾウの花期です。美しいトビシマカンゾウを観に、飛島まで足を運んでみませんか?



一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 次長兼主任研究員 大野希一

【文・写真】
一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 次長兼主任研究員 大野希一

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