【第62回】雪と氷のジオサイトを歩こう

2020年2月1日

冬も深まり、山も里もすっかり雪化粧となりました。東北地方には冬になると大陸から非常に冷たく乾いた北西の風が吹くようになります。日本海には暖かい対馬暖流が流れていますが、この冷たい風が暖かい日本海の上を渡ってくるうちに海から水蒸気を受け取り、鳥海山や奥羽山脈にぶつかって冷やされたくさんの雪を降らせます。

このように多くの雪が降るには、①中緯度にあり、②西に暖かい水面があり、③東に山地がある、という条件が必要です。世界的な豪雪地域として知られる日本、北ヨーロッパ、トルコ北東部、アメリカ合衆国の五大湖南岸などはすべてこの条件を満たしていることがわかります。

近年、観光協会や市民団体が企画するスノーシューを履いてジオサイトを訪問するスノートレッキングの人気が高まっています。法体の滝(由利本荘市)、冬師湿原や中島台(ともににかほ市)などでは、巨大な溶岩と豊富な水がつくる名瀑、鳥海山の岩なだれがつくった起伏のある地形、ブナの森…、厳冬期のジオサイトは夏とはまったく別の姿をみせています。中島台ではブナの巨木「あがりこ大王」の秘密を知ることができるでしょう。

また、十二滝や玉簾の滝(ともに酒田市)、二ノ滝(遊佐町)などでは、岩石と水の長い年月にわたる相互作用でさまざまな姿形を見せています。厳冬期の滝は白銀のなかで白糸を垂らし、ときに凍りつき氷柱をつくったりします。夏とはまったく別の姿です。

熟練したガイドの案内で、野生動物の足跡や落葉樹の冬芽を観察する楽しみもあります。この冬は雪と氷のジオサイトを歩いてみてはいかがでしょう。

        冬師湿原



鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 専任研究員 岸本 誠司氏

【文・写真】
鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 専任研究員 岸本 誠司氏

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