【第5回】-吹浦溶岩と大物忌神社吹浦口之宮-
2015年5月1日
鳥海山は、60万年もの長い間に、何千回も噴火してきました。噴火のたびに溶岩が流れ出し、それが積み重なってこの巨大な鳥海山ができあがったのです。
遊佐町の十六羅漢は磨崖仏です。この仏様が刻まれているのが鳥海山の吹浦溶岩。十六羅漢のある岬は人間の舌のように海に向かって出っ張っていますが、これが吹浦溶岩そのものです。10万年前、噴火で流れ出した溶岩がそのまま岬になったのです。
この溶岩を体感できる場所があります。遊佐町吹浦の大物忌神社吹浦口之宮に行ってみましょう。鳥居をくぐると目の前に見える石段の一番下は溶岩の底です。この石段の一番上の部分が、厚い溶岩の上になります。その厚さはおよそ40㍍、石段で159段になります。石段を昇るとすっかり疲れてしまいますが、それが溶岩の厚みなのですね。ちなみに吹浦溶岩は、日本の溶岩の中では中くらいの粘り気で、中くらいの厚さ。粘り気の弱いマグマでできた富士山の溶岩は石段で30段くらい。粘り気の強い長崎県雲仙普賢岳の溶岩の厚みは300段もあるのです!
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【文・写真】
秋田大学教育文化学部教授火山地質学専門 林 信太郎氏