【第33回】里山の湿原ジオサイト「加田喜沼湿原」
2017年9月4日
みなさんは「ハウルの動く城」という宮崎駿監督のアニメを見たことがあるでしょうか?その1シーンにハウルの家がでてきます。その家のまわりはお花畑のなかに池が点々とするすばらしい風景です。
この風景のもとになったのは「湿原」です。それも標高の高いところにある高層湿原なのです。水生植物の中にまるっこい線でかこまれた池が点在していて、天国を絵に描いたら、このようになるかと思える風景です。ただ、こんな風景を見るためには、ふつう長い距離を歩く必要があり、たいへんです。
ところが鳥海山・飛島ジオパークには、車からおりて数分歩くだけで、この極上の風景をみることのできる場所があります。
それは由利本荘市の加田喜沼。旧大内町の長坂というところにあります。私が上空50mくらいからドローンで撮影した写真をお目にかけましょう。植物と池との境界線がじつに魅力的な曲線ですね。この湿原では、ホロムイソウやモウセンゴケなど植物が発見され、環境省の重要湿地に指定され、由利本荘市の天然記念物にも指定されています。このか弱い湿原の自然を守り、貴重な遺産として後世に伝えるために、地元の人たちは様々な努力をしています。ぜひ、一度見学に訪れてみてください。
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【文・写真】
秋田大学教育文化学部教授火山地質学専門 林 信太郎氏