【第47回】島原大変肥後迷惑

2018年11月1日

火山はときどき大きく崩れます。もっとも「ときどき」といっても、何万年に一度くらいのことです。

鳥海山は紀元前466年という大昔に大きくくずれて広い平地を作りました。今のにかほ市のほとんどは、この60億トンもの土砂がたまった平地の上にあります。

では、このように大きく火山がくずれた例を一つだけ紹介しましょう。九州、長崎県の島原半島ジオパークのある島原市のすぐ裏には眉山(まゆやま)という小火山があります。1792年のこと、この眉山が小さな地震をきっかけに突然崩れてしまったのです。崩れた大量の土砂は海に流れこみ、津波をおこしました。大きな津波が起こったために島原市の対岸の熊本県の沿岸を大きな津波がおそいました。現在の熊本市の一部では15mから20mもの津波となったそうです。この山崩れ(山体崩壊といいます)と津波によって15、000名もの方がなくなるという日本の火山災害史上最大の被害がでました。これを「島原大変肥後迷惑」といいます。

今も、島原市に行くとそのあとをみることができます。にかほ市にもある「流れ山」という地形を見ることができます。小さな流れ山が市内に多数あります。海の中にもたくさんの流れ山があり、島になってたいへん美しい風景をつくっています。



秋田大学教育文化学部教授火山地質学専門 林 信太郎氏

【文・写真】
秋田大学教育文化学部教授火山地質学専門 林 信太郎氏

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