【第108回】冬、季節風(モンスーン)はなぜ吹く?

2024年1月1日

※冬の日本海。インド亜大陸の衝突がもたらす景観です。

冬、日本海側は強い風と雪に見舞われます。曇天の雪空の下、強く打ち付ける荒波と空を舞う波の花は、冬の日本海を象徴する景観と言えるでしょう。この景観は、ユーラシア大陸から吹き降ろす冬の季節風がつくったものですが、なぜ季節風は吹くのでしょうか。

冬になると、海より陸地の方が冷え込みが厳しくなります。ユーラシア大陸の上空の空気が冷やされるため、大陸では上空から冷たくて重い空気が吹き降ろすようになります。この冷たい風の一部が日本列島に吹き込み、冬の季節風となるのです。

冬の季節風が流れるコースは、ヒマラヤ山脈の存在が大きく関わっています。本来、ユーラシア大陸の中央から吹き出す冬の季節風は、日本列島だけでなく南のインド側にも吹き付けるはずです。しかし、10,000m近い高さを誇るヒマラヤ山脈があるために季節風は南下できず、山にぶつかって東に向きを変えます。この影響が日本列島にまで及び、冬に強い季節風が日本列島に長期間吹き続けるのです。同じ緯度で比較した場合、日本列島の日本海側だけ大量の雪が降るのはそのためです。

冬の季節風の遠因となっているヒマラヤ山脈は、およそ5000万年前から始まったインド亜大陸の衝突によって生じた山脈です。5000万年という年月が、今の冬の日本海側の景観をつくっています。



一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 次長兼主任研究員 大野希一

【文・写真】
一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 次長兼主任研究員 大野希一

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