【第35回】庄内砂丘が支える地域産業とチゴモズの関係

2017年11月1日

国道7号や112号沿いを走ると、ベルト状の海岸林を想像しがちですが、実はかなりの面積で農地と砂防林がモザイク状に広がっています。農地と砂防林が描く縞模様は、庄内砂丘特有の森林景観といえます。このクロマツ林を主体とした砂防林は、農地や集落を囲むように整備されており、飛砂や潮風による被害を防いでいます。これらの農地ではメロン栽培が盛んで、庄内砂丘メロンとして地域の特産品になっています。

そんな環境にチゴモズ(稚児百舌)という極めて希少な鳥類が生息しています。モズより小さく、一休さんのような青灰色の頭部が特徴です。チゴモズはこの30年ほどの間に全国の生息地の約80%で見られなくなり、絶滅危惧ⅠA(環境省)に選定されています。

ところが近年の生息調査で、庄内砂丘には多くのチゴモズが生息していることに加え、砂防林の林縁を好んで生活していることがわかりました。なんと、庄内地域は全国屈指の生息数と示唆されています。このモザイク状の砂防林がもたらす林縁の多さこそ、チゴモズが多い秘訣かもしれません。

クロマツ林(砂防林)は砂丘地農業を守り、人々の暮らしを支えるとともに人知れずチゴモズの命をはぐくんでいたのです。



鳥海南麓自然保護官事務所 長船 裕紀氏

【文・写真】
鳥海南麓自然保護官事務所 長船 裕紀氏

長船裕紀 氏のその他の記事