【第103回】草原の営みを次世代へ!

2023年8月1日

皆さんは「草原」が日本国土の何%か知っていますか。
答えはわずか1%ほど。100年ほど前には20%ほどあった草原が、現在では激減しています。これは人々の生活様式の変化によるもの。
かつて草原は、山菜や屋根の材料、飼料、肥料など、暮らしに欠かせない恵みを得る大切な場でした。
温暖湿潤な日本では、厳しい気候条件で樹木が生えない場所を除き、国土はやがて森林へ変化。草原は、採草や野焼きといった人々の営みの中で維持されてきたのです。

こうした草原のもつ価値に、いま改めて脚光が当てられています。CO2吸収や地下水を豊富に蓄える機能、優美な景観を生かした観光資源としても着目されています。

さて、ジオパークの地質サイトでもある「冬師湿原」(にかほ市)が、この度「未来に残したい草原の里100選」(目的:草原で育まれてきた知恵や技術、文化などを次世代へ引き継ぐ)に選定されました。
冬師“湿原”は“草原”の顔も合わせもっていて、乾いた場所にはススキ野原が広がっています。260haにも及ぶこの草原は、春の野焼きによって創出・維持されてきました。
本100選への選定によって、地域内外の方が冬師湿原を考えるきっかけとなり、草原のもつ価値を継承していくため、様々な角度、多様な参画のもとに協働する機運が高まることを期待しています。



一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 研究員 長船裕紀

【文・写真】
一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 研究員 長船裕紀

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