【第105回】法改正、❝アメザリ❞の扱いに要注意!
2023年10月1日
今年の6月1日、アメリカザリガニ(以降“アメザリ”)が「“条件付”特定外来生物」に指定されました。特定外来生物とは、人が海外から持ち込んだ生物のうち、生態系や人の身体、農林水産業へ大きな被害を及ぼす種のことで、北米原産のブラックバスやウシガエルなどもこれにあたります。これらの種は野外への放出や生体の移動、飼育が禁止されています。アメザリはこのうち愛玩飼育については禁止されない“条件付”となったのです。
アメザリが日本に初めて移入されたのは1927年、その後数十年かけて全国に分布を拡大。故にアメザリを“身近な生き物”として育った方も多いでしょう。しかし実際には、アメザリは日本の湿地生態系に大きな影響を与えており、侵入したため池で、5年足らずでジュンサイ等の水草が消滅し、それに伴ってゲンゴロウ等の水生昆虫も姿を消してしまった事例がいくつもあります。アメザリによる裁断・採食で水草が激減、水生昆虫や魚が隠れたり産卵するのに必要な条件も失われます。
鳥海山周辺も、すでに広い範囲が影響を受けています。一方で、まだアメザリが浸潤していないエリアもわずかに残っています。例えば牛渡川・八面川(遊佐町)、冬師湿原(にかほ市)で、これらはジオパークのサイト(守るべき場所)です。こうした場所は絶滅に瀕した生物たちの最後の砦といえます。
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【文・写真】
一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 研究員 長船裕紀