【第78回】トビシマカンゾウと鳥海山の関係

2021年6月1日

飛島はその昔、鳥海山の山頂が噴火で吹き飛んでできた島だという話がありますが、それは俗説で、1千万年ほど前に海底で噴火した火山が海上に顔を出している島です。しかし、飛島のシンボル、トビシマカンンゾウはどうでしょう。トビシマカンゾウは鳥海山にも自生している高山植物ニッコウキスゲの変種とされています。飛島自体は鳥海山からできたものでなくとも、トビシマカンゾウは鳥海山のニッコウキスゲが鳥に運ばれたり波に流されたりして飛島に渡り島に根付いたものである可能性も大いに考えられます。
私たちは鳥海山・飛島ジオパークとの共同研究で、トビシマカンゾウとニッコウキスゲのDNA解析を行っています。これまでの葉緑体DNAを中心に調べた結果だと、トビシマカンゾウの葉緑体型は鳥海山のニッコウキスゲとは違っており、秋田県の男鹿半島や宮城県の栗駒高原のニッコウキスゲと同じでした。飛島以外で唯一のトビシマカンゾウ自生地の佐渡島のものとも同じでした。となると、トビシマカンゾウの葉緑体型は鳥海山にはないものの、東北、佐渡に広く分布していることになり、起源はどこなのだろう、とさらなる疑問がわきます。研究は現在も続いているので、今後トビシマカンゾウの起源が解明されたらまたこのコラムで紹介します。

鳥海山のニッコウキスゲ



山形大学農学部 准教授 笹沼恒男

【文・写真】
山形大学農学部 准教授 笹沼恒男

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