【第66回】DNAが語るトビシマカンゾウの秘密

2020年6月1日

ジオパークは地質・地形を対象としたものですが、そこで生を営む動植物・生態系も重要な構成要素です。トビシマカンゾウは飛島の自然を代表する植物ですが、鳥海山にも生える高山植物ニッコウキスゲの変種とされており、鳥海山・飛島ジオパーク全体の象徴的な植物と言えます。

トビシマカンゾウは飛島と佐渡に固有の植物とされていますが、ニッコウキスゲとの関係や両島に生えるものが同一の分類群なのか、どの程度多様性があるのかなど、遺伝的なことについてはほとんどわかっていませんでした。山形大学と鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会との共同研究で、2018年度からトビシマカンゾウのDNA解析を進めています。まだ研究の途中ですが、現在までに得られた結果からトビシマカンゾウはニッコウキスゲという1つの種の中の分化した分類群で、飛島と佐渡のものは遺伝的には同じ分類群であるというこれまでの説が裏付けられ、それに加えて飛島や佐渡の島内にも多様性があることもわかりました。さらに鳥海山のニッコウキスゲは、湯の台口と大平口のものに違いがあるなど、山の中に高い多様性があることがわかりました。

美しい花を咲かせるトビシマカンゾウやニッコウキスゲですが、そのDNAには長い進化の歴史が刻まれているのです。



山形大学農学部 准教授 笹沼恒男

【文・写真】
山形大学農学部 准教授 笹沼恒男

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