【第110回】鳥海山麓を水田にトキが舞い命かがやく希望の里に「アグロエコロジーへの挑戦の必然性」

2024年3月1日

       ※「田んぼ生き物観察会」の様子

秋田、山形、新潟の日本海豪雪地帯は、山海里の気候と循環の中で稲作に最適な水田風土を先人が耕し醸し続けてきた豊かな地である。

ところがこの半世紀の間、農基法農政と新自由主義経済政治で地域が大きく変貌した。大規模化で格差が広がり、米価下落と低迷で、地域を守り続けた家族農業は排除され荒廃地が増えている。化学肥料の多用が環境負荷を引起こし、無人ヘリでネオニコチノイド系農薬が散布され昆虫やクモなど益虫をも徹底的に排除している。閉鎖性水域では富栄養化でアオコが大発生し、農業域を水源とする水道水のネオニコ系農薬汚染が危機を告げている。

ジオパーク域の農業も例外ではない。だがジオパークは、地域の自然と共生する生業と文化、風土を国民に気付かせ、現代の課題に対峙し未来に何を残すべきかを考えさせてくれる。

世界では、食料自給への本気の取り組み、化学合成肥料や農薬依存からの脱却、生態系を守りその恩恵を享受する敬意に基づく共生と多様性、農と食のシステムの科学的実践=“アグロエコロジー”がトレンドである。ジオパーク域での実践で、鳥海山の山麓に生き物の命が輝きトキが舞い、子供達の笑顔が溢れる水田風土を次世代に引き継ぐこと、そこには、真実を見抜き感謝で生きる人類としての使命と必然がある。

 



秋田県立大学生物資源科学部 准教授 近藤 正 氏

【文・写真】
秋田県立大学生物資源科学部 准教授 近藤 正 氏

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