【第46回】地形を知ることは「命」を守ること

2018年10月1日

「地形」という言葉から、皆さんは静止した「形」を思い浮かべると思います。しかし、地形は常に動き、変化し続けています。例えば、平野は「洪水」によって、山麓の扇状地は「土石流」によってできた「現在進行形」の地形です。さらに、平野や扇状地は、毎日少しずつ土砂が運ばれてゆっくりできるのではなく、大量の土砂が一気に運ばれてできます。自然界では日常の現象であるこれらの「急激な地形変化」のことを、私たちは「自然災害」と呼んでいます。

このように客観的な立場で自然災害を見れば、豪雨災害で目にする光景を「地形の健康な発達過程」「日常の現象」と捉えることができます。そして、「川の仕事は溢れること」「崖の仕事は崩れること」という新しい視点を持ち、「自然災害」を「日常のこと」として組み入れた「効果的な防災対策」を講じることも可能となります。さらに、地形には「過去の大規模自然災害の痕跡」が記録されているので、地域の地形の成り立ちを知れば「想定外」と言われる自然災害を「想定」することもできるのです。

地形を知ることは、命を守ること。「身近な地域の地形」がどのように「動いている」のか、皆さんも一度考えてみませんか?



東北学院大学 講師・理学博士  水本 匡起氏

【文・写真】
東北学院大学 講師・理学博士  水本 匡起氏

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