【第20回】複雑な地形と多量の雪が作るダイナミックな植物のすみか
2016年8月1日
鳥海山は何度も起こった火山活動のために複雑な地形をしています。そこに冬季にシベリアから吹き付ける強い季節風と日本海を北上する温かい対馬暖流の影響で多量の雪が降り、場所によっては10mを優に超える積雪があり、9月下旬まで残ります。こういった雪が多く積もる場所は雪田と呼ばれ、冬の間は断熱材のように働き地表を0度くらいに保ち、春には融けた雪により植物に水を供給します。
一方、風が強く吹き付ける場所にはあまり雪は積もらず風衝地と呼ばれる場所ができます。この風衝地では冬には雪の布団がないので非常に寒く植物にとって厳しい環境ですが、雪が少ないので春には早くから花を咲かせられます 。これら2つの環境にはそれぞれにうまく適応した植物が育っているため、高山地帯には多様な美しい植物たちがモザイク状に広がるお花畑ができあがっています。
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【文・写真】
秋田大学教育文化学部 准教授植物生態学専門 成田 憲二氏