【第29回】ジオパークと防災〜飛島の津波堆積物(下)
2017年5月1日
昨年2016年7月末、津波堆積物の研究者である平川一臣先生(北大名誉教授)を飛島にお招きし、飛島の新津波想定を読み解き、防災に役立てるための講演会と津波堆積物の現地見学会を開催しました。 津波堆積物とは、過去の津波によって運ばれた砂や礫などが地層となっているもののことです。飛島の津波堆積物は日本海側の津波の痕跡を示す重要なもので、地層からは過去に大きな津波があった履歴(1833年の庄内沖地震、9世紀頃と推定されるものなど)を見ることができました。また、海岸に見られるテーブル状の岩塊(隆起ベンチ)は、過去の直下型地震による地盤の隆起によるものだそうです。 震源(波源)地となる断層の想定によって津波の規模、到達時間は異なるので、たとえ津波が島を襲っても避難できる可能性は大いにあり、決してあきらめないこと、あわせて、直下型地震に対する備えや防災隣組単位での助け合いの重要性が指摘されました。 島民の皆さんと現地見学会を実施することで、過去の津波の痕跡を目で、肌で感じる機会となりました。飛島の津波堆積物は飛島の大地のなりたちを知る遺産です。今後は、住民防災、観光防災の意識を高め、防災教育においても、住民参加のジオパーク推進のためにも貴重なジオサイトになっていくことでしょう。
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【文・写真】
東北公益文科大学 公益学部(環境社会学)教授 呉 尚浩氏 (とびしま未来協議会事務局長)