【第36回】「秋田・山形でも起きていた!?平安時代の巨大地震」
2017年12月1日
「うちの県は、大きな地震は少ない、良かった。」秋田や山形で、ときおり聞かれることばです。しかし、歴史的にみると衝撃の事実が存在します。
仁和三年(878)5月、京都では出羽国(現在の秋田・山形)について、貴族達が大論争を繰り広げました。『日本三代実録』には「嘉祥三年(850)に起きた地震・津波で土地がぐちゃぐちゃになり、出羽国府が甚大な被害を受けたので、内陸に引っ越しさせたいがどうか」という内容が記されています。最終的には近くの高台への国府の移転で決着します。ここからは、平安時代に地域に甚大な損害を与えた巨大地震の事実が判明します。
なお、国府は現在の県庁のような役所で、発掘により山形県酒田市の城輪柵跡とされています。周辺からは、倒壊した建物跡が地下から多数発見されています。さらに最近の地質学の研究で、地下の堆積層の調査から、このとき遊佐町周辺では約20.5mの津波が起きていた可能性が指摘されています。
東日本大震災が起きた際、平安時代の貞観地震(869年)との共通点が相次いで提起されました。秋田・山形でも同じく歴史に学ぶとするならば、常日頃からの災害への備えが必要といえるでしょう。
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【文・写真】
山形大学基盤教育院 准教授 荒木 志伸氏