【第96回】檜山滝の秘密
2023年1月1日
檜山滝は、鳥海山の北東(由利本荘市鳥海町下直根)に位置し、柱状節理が階段状になっている急崖を流れ下る落差50mほどの滝です。檜山滝の水は沢内沢川となり、直根川を介して子吉川に流入します。
檜山滝を抱く丘陵は、鳥海山の基盤をなす出羽山地・丁岳山地に属し、周囲を直根川や子吉川に囲まれた狭小な地形を有しています。しかし、この丘陵の頂部には大きな凹地状の地形があり、この凹地が雨や雪解け水を広く集めて檜山滝に水をもたらしています。
この特徴的な凹地や檜山滝の形成と、檜山滝に見られる柱状節理には、関係がありそうです。柱状節理のある岩体は、マグマが地下で冷え固まって形成された貫入岩と呼ばれるものであり、この岩体の西側にも、岩質の異なる貫入岩体があります。これらの貫入岩体の存在が、頂部の凹地や檜山滝の岸壁の形成に関係した可能性が考えられます。
ところで、かつて地元の人々は檜山滝の脇の急崖を往来して、凹地へと通っていたそうです。現地で檜山滝を見上げると、人々の暮らしのたくましさを実感できることでしょう。また檜山滝を見上げながら、あるいは地図を眺めながら、檜山滝の上流に隠されている自然の不思議さに思いを馳せてみるのも楽しいことでしょう。
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【文・写真】
秋田大学教育文化学部 教授 林 武司 氏