【第91回】地域の宝“ぷるん”食感は今が旬!

2022年7月1日

4月から鳥海山・飛島ジオパークの事務局に仲間入りした長船と申します。昨年度までの約10年間、鳥海山南麓にある環境省猛禽類保護センターでイヌワシの保全業務に従事していました。

“鳥に詳しい人”と思われがちですが、専門は自然を俯瞰する生態学です。森里川海や里地里山を構成する様々な自然環境と、それらを基盤とする地域特有の伝統、文化、産業に関心があります。

さて、まもなく小暑。冷たくて喉越しのよい食べ物が欲しくなりませんか。キンキンに冷えたビールもよいですが、私がオススメしたいのは今が旬の「ジュンサイ」。ゼリー質で覆われた若芽は“ぷるん”とした独特の食感で、酢の物やお吸い物でおいしくいただけます。

一方で、伝統食材離れでジュンサイを食べたことがないという人も増えてきました。秋田県などの栽培ものが有名ですが、実は各地のため池に自生しています。

しかし、過疎化・高齢化によってため池の維持管理が難しくなり、防災の観点から埋め立てられることも少なくありません。さらに、アメリカザリガニが浸入すると水生植物が壊滅的に減少するなど、外来生物もため池の生態系に大きな影響をもたらしています。

このようにジュンサイは地域によっては絶滅の危機。鳥海山周辺でも状況は決して明るくありませんが、“まだ”身近なため池で見られます。これは地域の宝だと思っています。



一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 研究員 長船裕紀

【文・写真】
一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 研究員 長船裕紀

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