【第42回】海岸の断崖に生きる
2018年6月1日
にかほ市の大須郷から三崎公園にかけての海岸には、高さ約40mの断崖が見られます。険しい断崖の岩棚は、ウミウやハヤブサ、アオサギがねぐらや営巣地に利用しています。また、波で作られた海食洞は、クロサギやキクガシラコウモリが利用しています。
ウミウは、日中は象潟海岸などで潜水して餌の小魚を捕らえます。夕方になると、象潟海岸から南へ約7㎞の大須郷海岸へ飛行移動し、岩棚に止まり夜を過ごします。
ハヤブサは、断崖の岩棚に営巣し、ヒナを育てます。親鳥は、見張りに使う岩やクロマツの枝から飛び立ち、餌となるヒヨドリやムクドリ、ハトなどを捕らえると、特定の岩の上で、鳥の羽を嘴でむしってから巣に運び、ヒナに与えます。食べきれなかった餌は、岩の隙間に少しの間蓄えます。海岸には、溶岩末端部からの湧水が点在しますが、ハヤブサが、時々、湧水で水浴びをします。
鳥海山から流れ出た溶岩で形成された海岸の断崖では、生き物たちが岩棚や海食洞、湧水を巧みに利用し、命を繋いでいます。
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【文・写真】
秋田県立大学非常勤講師 加藤 竜悦 氏