【第92回】世界の砂不足から考える、地域の保全

2022年8月1日

湧水が流れ込み、水温が一定に保たれる鳥海山麓の海岸は、旬の岩牡蛎の生育に適した豊かな漁場です。また約8000年前に川から運ばれ堆積してできた庄内砂丘は、その水はけのよさが糖度の高いメロン栽培を可能にしています。

鳥海山・飛島ジオパークエリアの豊かな暮らしを支えるこれらの地形。しかし当たり前に存続するものではありません。

例えば砂浜。世界では砂不足による争いが起きているのをご存知でしょうか。砂は、コンクリートやガラス、マイクロチップなど電子機器を作るのにも必要で、需要が高まっています。なんとか砂を確保すべく海底から大量に採掘した結果、海岸の砂が海底へ流れて海岸線が後退したり、生態系に悪影響が及ぶことも。

また、砂浜の環境はダムの建設によって脅かされることもあります。海に流れるはずの土砂がせきとめられたり、水の流れが変わることで、海岸付近の環境にも影響が出てしまうのです。昔からある、地域の人々にとっては当たり前な環境も、知らず知らず負荷がかかり、維持が難しくなる場合もあります。

ジオパークは地形地質だけでなく、そこで築かれた自然環境、歴史、文化を複合的に捉える活動です。物事を多面的に理解し視野を広げれば、保全への意識も変わるかもしれません。

4月から事務局に仲間入りした私も、これから”ジオ的思考”で地域を伝えていきたいと思います。



一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 研究員 國重咲季

【文・写真】
一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 研究員 國重咲季

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