【第27回】-水と文化の関わり-
2017年3月1日
今回は、水と文化の深いかかわりについて紹介しましょう。
水は、私たちにとって不可欠な資源です。私たちは、水が無ければ、生物として生きていくことができないだけでなくヒトして社会生活を営むこともできないことから、古くから水と様々にかかわってきました。一方、水の在り方は地域によって多様であり、水の少ない地域もあれば、洪水が繰り返し発生する地域もあります。このような地域の水の在り方が、私たちの水に対する概念や認識を決定づけ、私たちの日常生活から信仰までの様々な行動様式・社会様式に影響します。このため水とのかかわり方は、文化の基盤の一つと考えることができます。国土庁は1999年に、人々が水を上手に活用し、また水を制する中で、長い時間をかけて生み出されてきた有形・無形の文化や伝統を「水文化」とし、各地域は、それぞれ個性的な水文化を有するとしています。水文化には、祭事や信仰、伝統工芸、水車や堰等の施設などのほか、水にかかわる生活様式や子どもの水遊びも含まれます。
鳥海山地域や飛島でも、多様な水文化をみることができます。例えば、遊佐町にある丸池様のように水域を信仰の対象にしたり、湧水を生活用水に用いたり、にかほ市上郷の温水路や遊佐町の神泉(かみこ)の水のような水舟を設けたり、農業や発電、水産業に利用したりしています。皆さんが暮らす地域に、どのような水文化が培われてきたかを見直すことで、地域への理解とともに愛着を深めることができるでしょう。
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【文・写真】
秋田大学教育文化学部 教授 林 武司 氏