【第114回】気候変動と日本人の文化
2024年7月1日
※渇水状態のため池(冬師湿原扇谷地ため池:2023年9月撮影)
気候変動は、日本の豊かな四季や伝統文化に深刻な影響を与えています。例えば、桜の開花時期は年々早まり、春の象徴である花見の風景が変わりつつあります。また、夏の猛暑や異常気象による豪雨は、風習行事の開催を難しくしています。これらの行事は、文化の継承や地域の絆を深めるといった重要な役割を果たしており、その影響は計り知れません。
日本人は昔から自然と共生する生活を大切にしてきました。農業を中心にした生活では、季節の移ろいに合わせて活動し、その恵みを享受してきました。しかし、気候変動はこの調和を乱し、農業や漁業に大きな影響を与え、食文化や生活スタイルにも変化をもたらしています。
昨夏、私たちの地域においても猛暑(少雨)の影響が目立ちました。稲作においては一部のため池で渇水が生じ、“稲枯れ”が確認されています(米の収量、品質低下といったリスクに)。にかほ市の「大竹いちじく」※は、収穫最盛期が20日も早かったようです。
※にかほ市(大竹地区)の風土に根付いた特産品で、農林水産省の地理的表示(GI)登録されている。
こういった状況を緩和するためには、エネルギー消費を見直しCO2排出を減らす必要があります。自然と調和する地域文化を守り、持続可能な未来を築くためには、一人ひとりの行動が不可欠です。まもなく迎える猛暑、改めて気候変動を意識するきっかけにしたいと思います。
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【文・写真】
一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 研究員 長船裕紀