冬師湿原が「未来に残したい草原の里100選」に選定!

2023年6月14日

冬師湿原(冬師・上坂)が「未来に残したい草原の里100選」に選定されました
本100選は全国に残る草原とその里に光を当て、人と自然の関わりの中で培われてきた知識や技術、人々の思いを共有し、次世代に受け継ぐことを目指すものです。「全国草原の里市町村連絡協議会」によって2022年から選定事業が進められています。

この度、冬師湿原(秋田県にかほ市)の管理者である冬師牧野農業協同組合が本100選に応募したところ、管理や利用、豊かな生物多様性などの側面が評価され、見事選定されました。

冬師湿原の野焼き景観

かつて草原は茅葺屋根の材料確保、牛馬の飼料や放牧、堆肥化のための採草など、生活基盤を維持するためには欠かせない場所でしたが、生活様式の変化や高齢化などにより、近年急速に減少しています。
一方で、草原は多様な動植物を育む豊かな自然環境であるほか、水源涵養や、二酸化炭素の吸収といった地球温暖化緩和への貢献など、社会的価値の高さも見直されています。

冬師湿原は地域住民による野焼きなどの維持管理によって草原環境が保たれており、その面積は260haにも及びます。野焼き後は6月にかけてワラビ採取(観光ワラビ園)を目的に地域内外から来訪者が見えます。四季折々の美しい景観から、自然観察会やスノートレッキングなど、年間を通じて活用されています。

「地質サイト」(鳥海山・飛島ジオパーク)冬師湿原と野焼き
冬師湿原のなだらかな凸凹地形は、2500年前に発生した大規模な鳥海山の「山体崩壊」(火山の噴火や地震の衝撃で、山が大きく崩壊すること)によって発生した「岩なだれ」が関係しています。この岩なだれが現在の冬師湿原にも到達したことで、凸凹地形となす流れ山をつくりだしたのです。

こうしたダイナミックな地球活動の形跡を残す冬師湿原は、地形地質的な学術的価値があると評価されており、鳥海山・飛島ジオパークの地質サイトになっています。
冬師湿原の野焼きによって草原環境が維持されているからこそ、私たちはその凸凹地形を見渡して、鳥海山の歴史的な地球活動を体感し学ぶことができるのです。

(参考)
・未来に残したい草原の里100選 第2回選定結果
http://sato.sogen-net.jp/2023/05/29/「未来に残したい草原の里100選」第2回選定地域が/

・冬師湿原の野焼き風景動画(鳥海山・飛島ジオパーク公式YouTubeチャンネル)

 

・冬師湿原の風景写真

野焼き風景 2023.4.20 (1)

野焼き風景 2023.4.20 (2)

野焼き風景 2023.4.20 (3)

野焼き風景 2023.4.20 (4)

野焼き後の風景 2023.4.20

野焼き後はワラビ採取が行われている 2023.5.21©長船裕紀

冬師湿原は日本の重要湿地(環境省)にも選定されている

 

リュウキンカやミズバショウが咲く湿地帯

リュウキンカとミズバショウ 4月頃が見ごろ