【第11回】-澗とマブネ-

2015年11月1日

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マブネ(シマブネとも)とは、明治末から昭和40年代まで使われた飛島独特の木造和船です。全長約8メートル、幅約1.2メートルほどの磯船で、飛島周辺の沿岸漁業に広く用いられました。マブネはL字型に刳り出した厚い材を船底部に用いた「オモキ造り」の構造をもっていて、秋田県八郎潟のカタブネにヒントを得た島の船大工・鈴木永助氏によって考案されました。

飛島の周囲は海蝕台という波の浸食で出来た水深の浅い岩場が広がっています。島ではその岩場の裂け目をニマ(澗)と呼び、船着き場として利用してきました。江戸時代を通じ飛島では庄内浜で造られた「板造り」の構造の船が使われていましたが、島では多少岩にぶつかっても壊れない頑丈な船が求められていました。明治に入り飛島で和船を新造することになったとき、板造りではなく、よりふるい構造をもつ「オモキ造り」が採用されたのです。マブネは、海蝕台の裂け目を船着き場と利用した飛島の環境と島民の智恵によって生みだされたものだといえるでしょう。

文化財的観点からも注目されるマブネですが、飛島には現存せず、酒田市資料館と致道博物館(鶴岡市)に一隻ずつが保存展示されているのみです。この貴重なマブネをもう一度、島で新造しジオツアーや文化継承などに活用できないかと思案しているところです。



鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 専任研究員 岸本 誠司氏

【文・写真】
鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 専任研究員 岸本 誠司氏

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